短編小説『夢を見る小鳥』

     夢を見る小鳥

 

 小鳥がいた。小鳥は空を見上げている。周りにはいっぱいの鳥たちがいて、その多くは空を見上げている

 けれど、なぜか空を飛ぼうとする鳥と、空を飛んでいる鳥ごく一部だった。そのことに小鳥は不思議に思いながら、自分の羽で羽ばたこうとした。

 

 だけど、それが中々難しい。空を飛ぼうと、必死に自分の羽を動かしていると、空を見上げているだけの鳥が言った。

 

諦めとけ、お前は飛べないよ。頑張るだけ無駄だ 」

 

 「どうして分かるの?」と、小鳥は問うた。

 

俺が飛べなかったからだ。飛べる奴らは特別だ。俺には才能がない。だから飛べないんだ。その様子を見るに、お前も俺と一緒だろ?」

 

 「そんなわけがない。」そう小鳥は言いました。「君が努力してないからじゃないの?」

 

「いいや、努力ならしたぜ。でも無理だった。だから飛べないんだ。」

 

 空を見上げているだけの鳥は小鳥に、努力なんてものがいかに役に立たないかを説き続けた。

 

 それでも諦めきれない小鳥は、ずっと、空を飛ぶ練習を続けました。何度も自分の羽で、羽ばたこうとしました。 

 けれど、中々上手くなりません。

 

 いつしか、小鳥は空を飛ぶことを諦めるようになりました

 時間は過ぎて、いつしか小鳥は立派な大人鳥になりました。

 

 そして、はたまた時間は過ぎ去って、

 

「ねえ、パパ。空ってどうやったら飛べるようになるの?」

 

 「分からない」。父親になった大人鳥は、そう答えるので精一杯。

 

「どうやって飛んでるんだろう?魔法かな?じぇっとそうち?で飛んでるのかな? ねぇパパ、どう思う?

 

 「分からない。少なくとも、飛べない俺に分かるわけないからな」

 

「どうして?僕たちは、同じ鳥なんでしょ?どうして飛び方が分からないの?」

 

 大人鳥は言葉に詰まってしまった。それだけではなく、大人鳥はこの質問をひどく不愉快に感じてきたのだ。

 

 「分からないな。だって俺は…」けれど、続きの言葉は小鳥に遮られた。

 

「飛べないからって?理由になってないじゃん。どうして飛べないかを聞いてるんだよ?」

 

 「……そうだ、俺には才能がないんだ。だから飛べないんだよ」苦々しい気持ちを覚えながら、大人鳥は口にする。

 大人鳥は、とても嫌な気分になった。

 なぜなら。

 

 「才能って、どうしたら手に入れられるの?」

 

 「…分からない、特別な鳥だけが持ってるんじゃないか?」

 これではまるで。

 

「ふーん、じゃあ飛べる鳥たちは特別なの?」

 

 「…ああ。そうなんじゃないか」

 まるで…自分は…

 

「いいなぁ…特別なものを持ってるって羨ましいよ」

 

 「本当にな。お前も、特別な親のもので育ったら違っただろうに」

 自分は……

 

「僕も空を飛んでみたいなぁ…」

 

 「俺も飛んでみたいよ」

 空を見上げているだけの鳥そのものじゃないか。